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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (90)
経済小説
2011年3月19日 07:00

平成20年12月 「できればスポンサーは地元で」

<開始決定>

 裁判所は、当社の申立以降の様子を見て、12月1日には、予定した日程で開始決定を下した。
 世間一般の常識としては、会社は民事再生の申立をもって、倒産会社のレッテルを貼られる。しかし、民事再生に当事者として取り組む債務者側としては、申立から開始決定までの期間は、いわば取り付け騒ぎなどの混乱を防止し、開始決定前に倒産会社の資産が散逸してしまうのを防ぐための暫定的な対応の時期であると考えたほうがいい。そして申立直後の混乱を防ぐために一時的に出される命令が保全命令であると理解すればわかりやすい。

世間一般の常識としては、会社は民事再生の申立をもって、倒産会社のレッテルを貼られる... 再生手続の開始決定がなされると、開始決定日以前に発生した債権は再生債権となり、再生債権は原則として再生計画に基づかずして弁済することは許されない。しかし、このなかには一般優先債権という例外があり、労働債権(社員の給与や退職金、社会保険料などであり、役員報酬は含まれない)は、民事再生と関係なく、資金繰りが許せば優先的に支払うことができる。租税債権(国・地方が課す租税公課)についても優先的に弁済できる(というか、民事再生を出しても免除してくれない)。
 当社でも月額1,000万円の消費税の予定納税をしていて、民事再生直前にはやむを得ず延滞していたが、当社が民事再生を申立てた直後に税務署の職員が取り立てにこられた。税務職員の職務への忠実度には関心させられたが、民事再生直後の混乱時であり気分的には大いにまいったものである。(これは、別途国税局OBの社外監査役に相談のうえ、後日、毎月決算して納付する方法に改めた。)

 いっぽう開始決定後に発生した債権は共益債権とされ、日常業務の範ちゅうの仕入代金、人件費、業務委託費、事務所経費・家賃などは原則として任意に支払うことができる。また電気代、水道代などのような継続的給付に当たる債権は、再生債権となるものであっても、開始決定日を含む期間分の請求であれば支払える。また、支払わないと民事再生手続に支障が生じるような重要な債権については、再生債権であっても開始決定前までに監督委員に対し、共益債権化の同意を得ることにより支払うことができるという例外規定があるのは、先に述べたとおりである。
 また、役員報酬は労働契約ではなく委任契約であるため、一般の取引先と同様に取り扱われ、申立直後に支払う予定にしていた分が、支払えずに終わった。開始決定後は、役員報酬を支払うことはできるが、その場合、開始決定前に監督委員の同意を得ておく必要がある。また些末な例だが、申立から開始決定までの間に、社員が営業活動をして交通費などの精算をすることが考えられるが、これも開始決定日を過ぎてしまうと再生債権となってしまうのである。
 このように開始決定は、民事再生申立後の最初の大きなヤマである。
 当社の場合、役員報酬の支給については、債権者集会で役員の続投を批判する声が特になかったため、監督委員の同意が得られ、12月以降はカットされた額を受け取ることができ、ありがたく思っている。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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